2015(H27)入試分析 算数 東大寺学園中学校
2015.01.28 14:32|入試問題分析(算数)|
今回は東大寺学園の問題を扱います。
一昨年,去年とかなり厳しい問題が並んだのに比べ,今年はずいぶん取り組みやすかったのではないか
というのが私が最初に一通り解いたときの感想でした。
ですが,受験者平均は55.8→43.1→51.9と,一昨年の水準までは戻りませんでした。
原因として思いつくのは,
■大問1の(2)や(3)でいいやり方が思いつかず,時間を食ってしまい,後ろの問題が平常心で受けられなかった。
■大問4のような問題はどうしても塾での対策が手薄になりがちなので(しっかりやっている塾もありますよ),
子どもたちよりもたくさんの問題を解いている私たちが感じるよりもはるかに出来が悪かった。
■大問5のような問題は立体図形が得意な子ほどハマってしまう罠があるので,元々苦手な子ができず,
得意な子も点数が取れないということで全体の平均点が伸びなかった。
(何年か前の四天王寺で,この問題よりははるかに簡単ですが同タイプの問題がありました。
その問題の解説をしたときに,よく出来る子が罠にはまって,「ああ,こういうところで引っ掛かるんだ」と
思った記憶があります。)
というようなことが考えられます。
その中でも今回は大問4を見てみましょう。
(問題)H27 東大寺学園中学校・算数 大問4番
次のような習性をもつ飛ばない虫を何匹か捕まえました。
習性 辺で囲まれた図形を底とする水そうに入れられると,入れられた場所から最も近い頂点まで
真っ直ぐに歩き,頂点に到達すると,そこに巣を作る。
巣から歩き出したときは,その巣が常に自分のいる場所から最も近い頂点となるような範囲だけを
動きまわる。
例えば,【図1】のような正三角形ABCを底とする水そうの地点アに虫を置いた時は,頂点Aに巣を作り,
その後この虫が動きまわることのできる範囲は図の斜線部分になります。この動きまわることのできる
範囲のことをテリトリーと呼ぶことにします。
このとき,次の問いに答えなさい。ただし,虫や巣の大きさは考えないものとします。
(1)【図2】のような1辺の長さが12cmの正方形ABCDを底とする水そうの地点イに虫をおいた時,この虫は
どの頂点に巣を作りますか。また,その虫のテリトリーの面積を求めなさい。
(2)【図3】のようなA,B,C,D,E,Fの6個の頂点をもつ図形を底とする水そうの地点ウに虫をおいた時,
この虫はどの頂点に巣を作りますか。また,その虫のテリトリーの面積を求めなさい。
(3)【図4】のような4つの正三角形をつなげてできたA,B,C,D,E,Fの6個の頂点をもつ図形を底とする
水そうがあり,その面積を120cm^2とします。これらすべての頂点にそれぞれ1匹ずつ虫をおきました。
このとき,各頂点に巣を作った虫それぞれについて,テリトリーの面積を求めなさい。

まず,なぜ【図1】のアの虫がこのようなテリトリーになるのかを分析しましょう。
まずは境界線の引き方を確認するために,下の図を見てください。
問い:平面上でPからとQからの距離を比べたときに,Pから近い方を赤,Qから近い方を青く塗りなさい

なんとなく,下のように色分けすることはできると思います。

では,この境界線を正確に引くにはどうすればよいでしょう。
聞いてしまえば簡単ですし,わざわざ説明するまでもなさそうに思えるかもしれませんが,
PQ間の中点から,PQに垂直な直線をひけばよいですね。

実は今回の問題はすべてこれで解決します。
例えば【図1】ですが,下のように赤い線(=AとBの境界線),青い線(=AとCの境界線),緑の線(=BとCの境界線)を引き,
それぞれの陣地を作ることができますね。(元の図ではAの頂点のみ考えるので,緑の線は不要ですが。)

では,やっと問題の解説です。
(1)イの虫はなんとなくDに近いであろうことはわかると思います。
では,頂点Dからのテリトリーを作図しましょう。
下のように赤い線(=AとDの境界線),青い線(=CとDの境界線),緑の線(=AとCの境界線)を引き,全ての境界線でD寄りの場所が求める面積になります。

これは正方形の1/4とすぐにわかりますね。12×12×1/4=36cm^2です。
※作図をしなさいというような問題であれば,まず対角線を引いて正方形のまん中を見つけてから縦横の境界線を
引くとよいですね。実際にイの虫はこのテリトリーに入っていることも確認できますね。
(2)ウの虫もなんとなくEに近いことがわかりますか?
下のように赤い線(=AとEの境界線),青い線(=BとEの境界線),緑の線(=CとEの境界線),オレンジの線(=DとEの境界線),紫の線(=FとEの線)を引き,全ての境界線でE寄りの場所が求める面積になります。

作図ができれば出し方は自由。6cm,6cmの直角二等辺三角形2.5個分とするなら,6×6÷2×2.5=45cm^2です。
実際にウの虫はこのテリトリーに入っていることも確認できますね。
(3)正三角形の中でのテリトリーは【図1】で研究済みです。各正三角形の中で同様のテリトリー分け作業を行うと,
下の図のようになります。

小さい直角三角形1つは120÷4÷6=5cm^2ですから,
A:5×4=20cm^2
B:5×4=20cm^2
C:5×2=10cm^2
D:5×8=40cm^2
E:5×2=10cm^2
F:5×4=20cm^2
が答えです。左右対称なことなどを利用すればかけ算は3つするだけでよいですね。
普段の学習時から作図をする練習をして,しかも作図をするときにただ何となく線を引くのではなく,
どのように作図をすればきれいに見えるかなどを意識していないと,なかなか解けない問題なのでしょう。
膨大な量の問題を解くことが要求される昨今の中学入試への勉強の中でそこまで質の高い学習を
求められるのはなかなか酷な話ですが,しっかり乗り越えてこそ,最難関への合格が勝ち取れます。(池)
一昨年,去年とかなり厳しい問題が並んだのに比べ,今年はずいぶん取り組みやすかったのではないか
というのが私が最初に一通り解いたときの感想でした。
ですが,受験者平均は55.8→43.1→51.9と,一昨年の水準までは戻りませんでした。
原因として思いつくのは,
■大問1の(2)や(3)でいいやり方が思いつかず,時間を食ってしまい,後ろの問題が平常心で受けられなかった。
■大問4のような問題はどうしても塾での対策が手薄になりがちなので(しっかりやっている塾もありますよ),
子どもたちよりもたくさんの問題を解いている私たちが感じるよりもはるかに出来が悪かった。
■大問5のような問題は立体図形が得意な子ほどハマってしまう罠があるので,元々苦手な子ができず,
得意な子も点数が取れないということで全体の平均点が伸びなかった。
(何年か前の四天王寺で,この問題よりははるかに簡単ですが同タイプの問題がありました。
その問題の解説をしたときに,よく出来る子が罠にはまって,「ああ,こういうところで引っ掛かるんだ」と
思った記憶があります。)
というようなことが考えられます。
その中でも今回は大問4を見てみましょう。
(問題)H27 東大寺学園中学校・算数 大問4番
次のような習性をもつ飛ばない虫を何匹か捕まえました。
習性 辺で囲まれた図形を底とする水そうに入れられると,入れられた場所から最も近い頂点まで
真っ直ぐに歩き,頂点に到達すると,そこに巣を作る。
巣から歩き出したときは,その巣が常に自分のいる場所から最も近い頂点となるような範囲だけを
動きまわる。
例えば,【図1】のような正三角形ABCを底とする水そうの地点アに虫を置いた時は,頂点Aに巣を作り,
その後この虫が動きまわることのできる範囲は図の斜線部分になります。この動きまわることのできる
範囲のことをテリトリーと呼ぶことにします。
このとき,次の問いに答えなさい。ただし,虫や巣の大きさは考えないものとします。
(1)【図2】のような1辺の長さが12cmの正方形ABCDを底とする水そうの地点イに虫をおいた時,この虫は
どの頂点に巣を作りますか。また,その虫のテリトリーの面積を求めなさい。
(2)【図3】のようなA,B,C,D,E,Fの6個の頂点をもつ図形を底とする水そうの地点ウに虫をおいた時,
この虫はどの頂点に巣を作りますか。また,その虫のテリトリーの面積を求めなさい。
(3)【図4】のような4つの正三角形をつなげてできたA,B,C,D,E,Fの6個の頂点をもつ図形を底とする
水そうがあり,その面積を120cm^2とします。これらすべての頂点にそれぞれ1匹ずつ虫をおきました。
このとき,各頂点に巣を作った虫それぞれについて,テリトリーの面積を求めなさい。

まず,なぜ【図1】のアの虫がこのようなテリトリーになるのかを分析しましょう。
まずは境界線の引き方を確認するために,下の図を見てください。
問い:平面上でPからとQからの距離を比べたときに,Pから近い方を赤,Qから近い方を青く塗りなさい

なんとなく,下のように色分けすることはできると思います。

では,この境界線を正確に引くにはどうすればよいでしょう。
聞いてしまえば簡単ですし,わざわざ説明するまでもなさそうに思えるかもしれませんが,
PQ間の中点から,PQに垂直な直線をひけばよいですね。

実は今回の問題はすべてこれで解決します。
例えば【図1】ですが,下のように赤い線(=AとBの境界線),青い線(=AとCの境界線),緑の線(=BとCの境界線)を引き,
それぞれの陣地を作ることができますね。(元の図ではAの頂点のみ考えるので,緑の線は不要ですが。)

では,やっと問題の解説です。
(1)イの虫はなんとなくDに近いであろうことはわかると思います。
では,頂点Dからのテリトリーを作図しましょう。
下のように赤い線(=AとDの境界線),青い線(=CとDの境界線),緑の線(=AとCの境界線)を引き,全ての境界線でD寄りの場所が求める面積になります。

これは正方形の1/4とすぐにわかりますね。12×12×1/4=36cm^2です。
※作図をしなさいというような問題であれば,まず対角線を引いて正方形のまん中を見つけてから縦横の境界線を
引くとよいですね。実際にイの虫はこのテリトリーに入っていることも確認できますね。
(2)ウの虫もなんとなくEに近いことがわかりますか?
下のように赤い線(=AとEの境界線),青い線(=BとEの境界線),緑の線(=CとEの境界線),オレンジの線(=DとEの境界線),紫の線(=FとEの線)を引き,全ての境界線でE寄りの場所が求める面積になります。

作図ができれば出し方は自由。6cm,6cmの直角二等辺三角形2.5個分とするなら,6×6÷2×2.5=45cm^2です。
実際にウの虫はこのテリトリーに入っていることも確認できますね。
(3)正三角形の中でのテリトリーは【図1】で研究済みです。各正三角形の中で同様のテリトリー分け作業を行うと,
下の図のようになります。

小さい直角三角形1つは120÷4÷6=5cm^2ですから,
A:5×4=20cm^2
B:5×4=20cm^2
C:5×2=10cm^2
D:5×8=40cm^2
E:5×2=10cm^2
F:5×4=20cm^2
が答えです。左右対称なことなどを利用すればかけ算は3つするだけでよいですね。
普段の学習時から作図をする練習をして,しかも作図をするときにただ何となく線を引くのではなく,
どのように作図をすればきれいに見えるかなどを意識していないと,なかなか解けない問題なのでしょう。
膨大な量の問題を解くことが要求される昨今の中学入試への勉強の中でそこまで質の高い学習を
求められるのはなかなか酷な話ですが,しっかり乗り越えてこそ,最難関への合格が勝ち取れます。(池)
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