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2016(H28)入試分析 算数 ラ・サール中学校

2016.02.21 16:16|入試問題分析(算数)
今回はラ・サール中学校を取り上げます。

今年の問題も去年に引き続き,幅広い単元の基礎力をはかる出題となりました。
とびぬけてきついという問題はないが,ていねいに問題を解きほぐす力があり,各単元のつまづきそうなところをきちんと
理解している子でないと点数に結びつかないという感じです。非常にきれいな出題と言えるのではないでしょうか。
各問題に目を通してみると,
大問1 計算3題。(3)は流行りの繁分数を普通の式の形に直した問題です。
大問2 数の性質,速さ,平面図形,場合の数,推理の小問5題。
大問3 食塩水の定番問題。ここまでは間違えたらその分だけ差をつけられてしまいます。
大問4 平面図形の面積比の問題。誘導にのるとスムーズに解けるのですが,うまくのれなかった子はちょっと苦労したかも。
大問5 数の規則性(数列)問題。「5の倍数を除く」というのがあまり慣れていないでしょうから,慎重に作業を進めたいところです。
大問6 立体の切断。下で解説します。

(問題)H28 ラ・サール中学校 大問6番
図は1辺が6cmの立方体を真横に2cmずつずらして3個積み上げてできた立体です。このとき,次の問いに答えなさい。
(1) この立体の表面積は何cm^2ですか。
(2) 図の3点P,Q,Rを通る平面でこの立体を切ったとき,一番下にあった立方体は2つの立体に分けられます。
 (ア) 切り口を解答欄にかきなさい。
 (イ) そのうちの,点Aを含む方の立体の体積は何cm^3ですか。ただし,角錐の体積は(底面積)×(高さ)×1/3です。

2016_rasaru_6_01.png

(1) これはささっと取ってしまいたいところです。
立方体3個の表面積は6×6×6×3=648cm^3ですが,接着されているところで表面積が減少します。
1か所の接着で4×6×2=48cm^2減少しますから,
648-48×2=552cm^2が答えです。

(2) おそらく,見えないところの点線をかきこんで,更に切り口をかきこんで・・・とやって,混乱した子が多かったと思われます。
この問題は,「平行な面の切り口は平行になっている」ということをしっかりと理解しているかを確認する問題です。
しかも,一番下の立方体の切り口だけかきこめばよいので,全ての切り口をかきこんでややこしくする必要はありません。

まずは,Rから前の面に切り口をかきこみましょう。
前の面は後ろの面の切り口と平行になっています。
後ろの面の切り口はPとQを結べばよいので,12cm:8cm=3:2の直角三角形が浮かび上がりますね。
前の面の切り口をかきこむので,3:2=6cm:4cmの直角三角形を作ればよいことになります。
2016_rasaru_6_02.png
実際の切り口は下の図の赤線になります。

次に,RとQを結べば,上の面の切り口がわかります。合わせて下の面の切り口もかきこめそう。
元の立体でRとQを結ぶと,8cm:6cm=4:3の直角三角形が浮かび上がりますね。
上の面は4:3=6cm:4.5cm,下の面は4:3=2cm:1.5cmの直角三角形を作りましょう。
2016_rasaru_6_03.png
最終的にかきこむ切り口はこんな感じですね。
2016_rasaru_6_03_5.png

(3) (2)ができればあとは簡単。三角すい台の切り口を延長して三角すいを作りましょう。
大きい三角すいと先っぽの切り取る三角すいの体積比は(3×3×3):(1×1×1)=27:1ですから,
2016_rasaru_6_04.png
6×4.5÷2×9×1/3×(27-1)/27=39cm^3となります。

聞いてしまえばそんなに難しくないが,実際にテストになると点数にならないという感じの問題です。
普段の勉強でもそんなことありますよね?授業を聞いて分かった気になって,テストになるとなぜか取れなかった。
そういうところで1つ1つきちんと「自力で解けるようになるような」勉強をしてきた子が最終的には合格していきますよ。(池)
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2016(H28)入試分析 算数 六甲中学校(B日程)

2016.02.20 18:59|入試問題分析(算数)
今回は六甲中学校のB日程です。

A日程と同様で問題用紙2枚。1枚目が大問6までの計算を除く1問1答式。
2枚目がそれぞれ小問2~3問の大問3つ。

1枚目の右半分から最後の大問9まで、六甲らしいよく練られた良問が続きます。
決して難解ではないが易しすぎることもなく、灘や甲陽を受験してきた受験生にとっても程よい難易度の問題でしょう。

150点満点で、204名の受験者平均は74.5点、合格者92名の平均は98.8点。
点数の出方も程よい感じでした。

B日程は算数で7割あたりを目指さないといけません。

今回はこのうち大問8を取り上げます。
(問題)H28 六甲中学校(B日程) 算数 大問8番
運動場に図1のような縦の長さが80m,横の長さが90mの長方形がかいてあり,A,B,C,Dの地点があります。おさむ君はA地点を出発してB地点の方向に,まさと君はC地点を出発してD地点の方向に,それぞれ一定の速さでまっすぐ歩き出します。長方形の辺まで来たら,図2のように辺との角度が同じになるように進む向きを変えます。おさむ君がA地点からB地点まで進むのには30秒かかり,まさと君がC地点からD地点まで進むのには40秒かかります。次の(1),(2)の問いに答えなさい。
(1) 2人が1回も進む向きを変えることなく出会うには,どちらが何秒早く出発すればよいですか。
(2) 2人がちょうど2回ずつ進む向きを変えてから出会うには,どちらが何秒早く出発すればよいですか。

rokkou B 2016 8 1
(1) ABとCDの交点をFとします。
AFとFBの比,CFとFDの比が分かれば、おさむ君とまさと君がF地点まで行く時間がわかりますね。
rokkou B 2016 8 2
BとD,EとFを結んで、三角形BDF,DEF,EBFに分けると面積の比が3:3:4となります。
AF:FB=3:7,CF:FD=2:3となりますから、
おさむ君がAからFまで行くのに30秒×3/(3+7)=9秒
まさと君がCからFまで行くのに40秒×2/(2+3)=16秒
と分かります。
16-9=7より、まさと君が7秒早く出発すればいいですね。
(2) 反射の問題の応用ですから、鏡の世界で考えるといいでしょう。
まず、出会うまでのようすを図にかいてみます。
rokkou B 2016 8 3
これを、出会った点はそのままに、一直線で交わるように展開してやれば、次のような図ができます。
rokkou B 2016 8 4
この図をもとに、(1)と同様に出会うまでに何秒かかるかをそれぞれ考えましょう。
rokkou B 2016 8 5
黄色い三角形の2辺の比は3:7、緑色の三角形の2辺の比は3:2なのでそれぞれの長さを③,⑦,[3],[2]とすると
③+[3]=190
⑦+[2]=220
ここから③=56mなので、まさと君が出会うまでの時間は40×56/30=224/3秒
[2]=268/3mなので、おさむ君が出会うまでの時間は30÷40×268/3=67秒
224/3-67=23/3秒で、まさと君が23/3秒早く出発すればいいということになります。

大問9はおうぎ形と長方形を回転させる問題ですが、定石通り片方を固定して考えると、見た目から受ける印象よりもずっと解き易い問題になります。
今年の六甲B日程の問題は、大問8にしてもそうですが、いかに見知った問題に結び付けていけるか、というところがポイントだったように思います。
ある程度練習量を積むことももちろん大切ですが、普段の練習で「見慣れない問題をなじみの問題に落とし込む」ということを十分意識しておくことが大切ですね。(道)
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2016(H28)入試分析 算数 六甲中学校(A日程)

2016.02.14 13:04|入試問題分析(算数)
問題用紙2枚に大問9つ。
1枚目が大問1の計算問題(2問)以外がほぼ1問1答で大問6まで。
2枚目が大問3つ(小問9つ)という形式は、例年と変わりません。
1枚目の難易度は例年通り、簡単すぎず難しすぎず、見たことのあるような問題をうまくアレンジして出題しています。
受験生の視点からだと、見慣れているような問題だけど、少し難しく感じる、そんな良問がならんでいます。
そして2枚目。
大問7と大問9が、難しくはないが、けっこう手間のかかりそうな問題。
逆に大問8は、塾でふつうに扱うベンツ切りの簡単な問題。
ギャップが大きいですが、大問9は列車の長さも移動距離も分かっていて、列車の速さもすぐに出るので、「警報機のなり始めるポイント」「警報機のなり終わるポイント」の時間をかき込んでいけば、実はそう難しい問題ではないことが分かります。
ただ、本番で、この問題を見ると、初めて見る図ということもあり、気持ちが萎えてしまいそうですね。

2016年度の合格最低点は400点満点で204点、昨年が206点でしたから大きく変わってはいません。
算数は150点満点で、受験者平均が59.7点、合格者平均点は73.8点。
ですから、5割弱で、合格ということになっています。
ですので、A日程の目標点は5.5割としておきます。

今年の問題で5.5割を取るためには、小問数18問で、10~11問正解する必要があります。
1枚目で3個、2枚目大問7と大問9合わせて4個~5個間違える、逆に言えば、残った問題はきちんと正解しないといけません。
難しい問題はさっさとパスして、できそうなところを1問1問をていねいにやっていかないといけません。
解けそうだ、解けそうにないという見極めも大切です。

では、今回はこの中から1枚目の大問6を解説します。

(問題)H28 六甲中学校(A日程) 算数 大問6番
図のように1辺が8cmの正六角形ABCDEFの辺上に点P,Q,R,S,Tがあり,APの長さは3cmです。点Pと点Q,R,S,Tをそれぞれ結ぶと,正六角形の面積が5等分されました。RS,TEの長さはそれぞれ何cmですか。
rokkou A 2016 6 1
〔RS〕
rokkou A 2016 6 3

三角形PDEは正六角形の1/3で三角形PRSは正六角形の1/5なので
DE:RS=1/3:1/5=5:3より、RS=8×3/5=4.8cm
〔TE〕
図のように、BAをA側に延長し、EFをF側に延長して交点をGとします。
rokkou A 2016 6 2

三角形GAF(☆)は正六角形ABCDEFの1/6
四角形APTF(◎)は正六角形ABCDEFの1/5なので三角形GPTは正六角形ABCDEFの1/6+1/5=11/30
三角形GPT三角形GAF(☆)の(GP/GA)×(GT/GF)なので
1/6×11/8×(GT/GF)=11/30
GT/GF=11/30÷11/8÷1/6=8/5よりTE=8-(8×8/5-8)=3.2cm

今年のA問題のセットは、難易度的には例年と大きく変わった様子はありません。
ですが、算数の受験者平均は昨年と比べて10点以上ダウン、合格者平均にいたっては18点以上のダウンです。
1枚目に少々時間を取られたことと、2枚目が実際の難易度より「難しく見えた」ことが要因ではないかと思います。
先に書いた通り、取れる、取れないという見極め、取れそうな問題はきちんと取りきるということが大切です。
見極めの力は、簡単には身につきませんが、B日程も含めて過去問にしっかりあたり、その中で磨いていきましょう。(道)


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2016(H28)入試分析 算数 洛星中学校(後期)

2016.02.13 09:58|入試問題分析(算数)
さて,今回は洛星中学校(後期)を見てみます。

問題を解いた感想としては,数年前の「えぐい洛星後期の問題」というのは姿を消しています。
が,子どもたちが正解までたどり着くのは結構しんどいのかなという問題が多いですね。
単元の得手不得手,情報整理作業の得手不得手,作図の得手不得手,…
皆が受験勉強を進めていく中で,つい逃げたくなるところで,モロに点数差が出るようなテストに
なっているように感じます。

各問題に目を通してみると,
大問1 (1)の計算はできて当然。(2)の繁分数は練習量が少ないので,これまで出会ったときに逃げなかったかどうかです。
大問2 (1)も問題そのものの難易度よりも,正解にたどり着くまでの道のりが長くて苦戦した子が多いかと思われます。
(2)はフローチャートが描ければ余裕。必ず正解したいところです。
大問3 ニュートン算としては難易度は高くないですが,嫌いな人が多い単元です。
大問4 (1)(ア)の作図は×にされている子が多いんじゃないかなぁ……。普段,ノートで作図するときに,どれくらいマス目を
意識しているかが問われます。(1)(イ)や(2)も作図能力を鍛えていない子にはかなりきつかったのではないでしょうか。
ちなみに,作図ができてしまえば,この手の問題としては十分正解できる難易度です。
大問5 これも苦手な人が多い流水算。数値設定は「秒」があるのが鬱陶しいだけで,比較的親切設計です。
しかし,正解率はそれほど伸びないんだろうなぁ,と予想。
大問6 定番の電球の周期問題。周期時間が長いので,雑な整理をする子にはきついのですが,これも難易度としては
それほどでもない感じ。

と見てみると,大問1と2で簡単な方をしっかり押さえ,大問3~6で得意な単元を中心に半分取る,
これで受験者平均の4割5分は越えますね。できれば6割には持っていきたいところです。

では今回は大問5を見てみましょう。

(問題)H28 洛星中学校(後期) 算数 大問5番
川の上流にA地点,下流にB地点があります。図1のように,船Pの先頭がAを通過してから,川を下り最後尾がBを
通過するまで,26分15秒かかります。また,図2のように,Pの先頭がBを通過してから,川を上り最後尾がAを通過
するまで,35分かかります。
rakuseikouki2016_5_01.png
(1)船Pの静水での速さは,川の流れの速さの何倍ですか。

図3のように,Pの最後尾がBを通過してから,川を上り先頭がAを通過するまで,30分20秒かかります。
rakuseikouki2016_5_02.png
(2)AB間の距離は,船Pの長さの何倍ですか。

図4のように,船Pの先頭がAを通過し川を下り始めたのと同時に,船Qの先頭がBを通過し川を上り始めました。
やがて,図5のように,PとQの先頭が出会いました。ただし,Qの長さおよび静水での速さは,Pと同じとします。
rakuseikouki2016_5_03.png
(3)2つの船が出発してから先頭が出会うまで何分かかりましたか。

2つの船の先頭が出会ったときにPはエンジンを停止し,川の流れで流されて下流へ進みました。その後,図6のように,
Qの最後尾がAを通過したとき,Pの先頭はBまで540mの地点にいました。
rakuseikouki2016_5_04.png
(4)AB間の距離は何mですか。


(1) 「AB間+船の長さ」の距離を,図1では105/4分で,図2では35分で移動しています。
速さの比は逆比ですから,下りの速さ:上りの速さ=4:3,流速や静水時の速さのことも考えて,
上り=[6]m/分,静水時[7]m/分,下り=[8]m/分,流速=[1]m/分としておくとよいですね。
答えは,7÷1=7倍となります。

(2) 同じ上りである図2と図3を比べてみましょう。
移動した距離の違いは「船の長さ×2」,かかった時間の違いは「4分40秒」,つまり,船の長さの移動に2分20秒かかります。
AB間の距離を移動するのにかかる時間は35分-7/3分=98/3分なので,
(98/3)÷(7/3)=14倍が答えです。
なお,この時点で,船の長さ=[6]×7/3=[14],AB間の距離=[14]×14=[196]としておくと,先がとても楽になります。

(3) [196]÷([6]+[8])=14分。単なる出会いの問題です。

(4) 図6は出発してから35分後の状態ですから,Pは14分下った後,35-14=21分流されたことになり,
[8]×14+[1]×21=[133]進んでいます。つまり,[196]-[133]=[63]が540mにあたるので,
540×196/63=1680mが答えですね。

問題の見た目に対して,解説は随分シンプルに見えますが,おそらく(2)のところで書いた,船の長さとAB間の距離を
決めてしまう作業をしていない子が(3)(4)で混乱しやすくなると思われます。

速さ得意!流水算得意!って子は自分ができる形で解いてもらって全然かまわないのですが,ちょっと苦手だなという子や,
具体的な距離がわかっていないと正解率がぐっと下がる子は,速さの比と時間から,距離も同じ種類の比で表しておくという
ような作業を意識してやっておくと取り組みやすくなりますよ。(池)
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2016(H28)入試分析 算数 洛星中学校(前期)

2016.02.08 15:38|入試問題分析(算数)
さて,今回は洛星中学校(前期)を見てみます。

昨年は受験者平均が42点(120点満点の3割5分)というとんでもない状況でしたが,
今年はかなり問題の難易度も下がり,まともな点数になったのではないでしょうか。
※この記事を書いている時点ではそのあたりの数字がHPに掲載されておりません。

各問題に目を通してみると,
大問1 (1)(2)はケアレスミスさえしなければ大丈夫。(3)は考え違いをしてしまうと抜け出すのに苦労するかもしれません。
大問2 (1)はそれほど難しくないですが,(2)は罠にはまる可能性大!(というか,私自身が初めて解いたときにはまりました…)
大問3 (1)は楽勝。(2)もよほど立体が苦手でない限りはいけるでしょう。(3)は合否を分けるあたりの問題ですが,
     問題の系統としては真新しいものなわけではないです。
大問5 (1)(2)は確実に押さえておきたいですが,(3)(4)は速さが得意な子でなければ取れなくてもいいかな…
大問6 (1)は書き出して合わせればOK,(2)は根性で書き出す子がいるかな…,(3)は取れなくてもまぁよいでしょう。

と見てみると,得点率5割をはさんで結構上下にぶれそうな感じですね。

では今回は大問4を見てみましょう。

(問題)H28 洛星中学校(前期) 算数 大問4番
図1のような,底面の円の半径が5cm,高さが6cmの円柱があります。
rakusei2016_4_01.png
(1) 図1の円柱に,青色の糸をAからDまで側面を半周し長さが最も短くなるように巻きつけます。
次に,黄色の糸をDからAまで側面を半周し長さが最も短くなるように巻きつけます。すると図2のようになりました。
このとき,側面のうち2色の糸より下の部分の面積を求めなさい。
rakusei2016_4_02.png
(2) 図2の状態の円柱に,さらに赤色の糸をAからCまで側面を1周し長さが最も短くなるように巻きつけます。
このとき,側面のうち3色の糸で囲まれている部分の面積を求めなさい。

(3) (2)の状態から糸をすべてはずします。
図1の円柱に,緑色の糸をAからDまで側面を半周し長さが最も短くなるように巻きつけます。
次に,紫色の糸をBからCまで側面を半周し長さが最も短く,緑色の糸と交わらないように巻きつけます。
最後に,黒色の糸をAからCまで側面を2周し長さが最も短くなるように巻きつけます。
このとき,側面のうち3色の糸で囲まれている部分の面積を求めなさい。


(1) 受験生であれば,「立体・糸巻き・最短距離」と聞いたら,0.1秒後に展開図をかきはじめなければなりません。
今回は円柱の側面に巻きつけていますので,側面の展開図だけかきましょう。
rakusei2016_4_07.png
上図のようになりますので,10×3.14×6÷2=30×3.14=94.2cm^2となります。

(2) (1)の図にAからCまで赤色の糸を書きこんでみましょう。
rakusei2016_4_08.png
Dは長方形の横の辺の中点なので,DC’:AA’=1:2。
△DC’Xと△A’AXの相似比は1:2ですから,DX:XA=1:2となります。
つまり,求める面積は(1)の答えの1/3ですね。94.2÷3=31.4cm^2となります。
なお,赤い線を左上がりに書きこんでも,下のような左右対称の図になるだけなので,答えは変わりません。
rakusei2016_4_09.png

(3) 緑色の糸と紫色の糸の書きこみ方は1通り(左右対称のものもありますが,それは無視してよいでしょう。)ですが,ここに
黒の糸をかきこむのですが,右上がりに書きこむか左上がりに書きこむかの2通りの書きこみ方があります。
まずは右上がりに書きこんだ図を見てみましょう。
rakusei2016_4_12.png
点線FBの長さはEA’の長さの半分で1.5cmですから,FB:EC’=1:2。
△FBXと△EC’Xの相似比は1:2ですから,BX:XC’=1:2となります。
同様に,DY:YA=1:2ですので,網がけ部分は平行四辺形ABC’Dの(2+2)/(1+2+1+2)=2/3倍,
15.7×6×2/3=62.8cm^2が答えですね。

次に左上がりの図を見てみましょう。
rakusei2016_4_14.png
オの部分が3色の糸で囲まれているのはすぐにわかるかと思いますが,ウやエの部分も実は3色の糸で囲まれています。
(右のウとエを,長方形の左側に点線のようにもっていくと分かりやすいですね。)
△AEIと△ACHは相似で,相似比が1:2,面積比が1:4なので,ウ=①,エ=③としましょう。

ア+イ+ウもア+ウ+エも長方形の1/4なので,イ=エ=③となり,
△CHDと△CGC’も相似で,相似比が1:2,面積比が1:4,よって,ア=①とできます。

長方形全体の面積は(①+③+①)×4=⑳,オの面積は⑳-(①+③)×4=④,
色のついた部分の面積は6×10×3.14×12/20=36×3.14=113.04cm^2となります。
※最後の面積比を出すところは,洛星を受ける子であれば何度も見てきている図ですから,様々な解法でサッサと解けるように
しておきたいところです。
(1)(2)くらいまでは合わせておかないと物足りない感じでしょうかね。(3)は答えが2通り出るので,しんどい方で考えた子は
ちょっとかわいそうだったと思います。

いずれにしても,立体の問題は平面上での考え方にもっていくというのはよくある出題ですので,しっかりと練習しておきましょう。
(池)
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2016(H28)入試分析 算数 四天王寺中学校

2016.02.06 10:02|入試問題分析(算数)
今回は、大阪の女子校の最難関、四天王寺中学校です。

医志コースができて3回目の入試、まずは応募人数と競争率から。
2014年度 553名 (2.3倍)
2015年度 612名 (2.5倍)
2016年度 589名 (2.4倍)
ですが、これは医志コース、英数Ⅱコース、英数Ⅰコースを合算したもので、例えば昨年度だと、定員35名の医志コースを第一志望とする受験生は、全体の7割にあたる424名でしたから、その倍率は何と12倍!

医志コースを希望する受験生にとっては、非常に狭き門となっているのが現状です。

さて、肝心の算数の入試問題の話です。
大問は8つで小問が20問。
1 計算2問
 ②は多少工夫が必要ですが、きちんと押さえたい問題。
2 文章題3問
 ①整数問題、②ニュートン算 ③割合
 ②は鶴亀算がセットですが、落ち着いて処理すれば大丈夫。
3 平面図形 2問
 直角三角形型の相似を利用する問題ですが、受験生にとってはやり慣れた問題でしょう。
4 平面図形と比 2問
 ①は隣辺比。これは押さえたい所ですが、②はやや難解に感じるかも。簡単な方法がありますが、それは別の機会に。
5 速さ 2問
 円周上の点の移動ですが、何か所かの点で停止する分、ていねいに解いていかないといけません。
 少し手間のかかる問題です。
6 場合の数 4問
 3個のさいころを振ってルールに従って得点を考える問題。
 ていねいな場合分けが決め手です。
7 数表 3問
 ①②は、規則さえ分かれば力ずくでも何とかなりそう。③は少し工夫が必要です。
8 立体図形 2問
 ②の立体を回転させて体積を求める問題が、難しく感じられるかもしれませんが、実は、それほどでもありません。
 段ごとの平面を回転させてみましょう。

これらの問題で、医志コースで8割、英数Ⅱで7割、英数Ⅰで6割が合格の目安と考えられます。

今回は大問6の場合の数を取り上げます。
(問題)H28 四天王寺中学校 算数 大問6番
赤白青の3個のさいころがあります。これらのさいころを投げて,次のように得点を決めます。
☆ 3個の目の数がすべて異なるときは,いちばん大きい目の数を得点とする。
☆ 2個の目の数が同じで,残り1個の目の数がそれと異なるときは,同じ目の数の2倍を得点とする。
☆ 3個の目の数がすべて同じときは,その目の数の3倍を得点とする。

例えば,「赤の目が4,白の目が5,青の目が6」ならば6点
     「赤の目が4,白の目が4,青の目が5」ならば8点です。
次の〔  〕にあてはまる数を入れなさい。

① 3個のさいころを1回投げたとき,得点は最低〔 ア 〕点で,そのような目の出方は〔 イ 〕通りあります。また,得点が6点になる目の出方は〔 ウ 〕通りあります。

② 3個のさいころをAさんとBさんがそれぞれ1回ずつ投げたとき,Aさんの得点がBさんの得点の5倍になるような目の出方は〔 エ 〕通りあります。

赤、白、青のさいころの目を(赤,白,青)と表すことにします。
① 得点が少なくなりそうな場合を、いくつか書き出して調べてみましょう。
(1,2,3) →1番目のルールで、3点
(1,1,2) →2番目のルールで、1×2=2点
(1,1,1) →3番目のルールで、1×3=3点
どうやら得点が1点になる場合はなさそうで、ア 2点が最低点で決まりです。
そして2点になる場合は、1が2個とそれ以外が1個ですね。
(1,1,△)、(1,△,1)、(△,1,1)の3つの場合があります。
どの場合も△には2~6の5個の数を入れることができますから、5×3=イ 15通りですね。
次に得点が6点になる場合をルールごとに考えます。
1番目のルール
(6,△,□)、(△,6,□)、(△,□,6)の場合があり、それぞれ△と□には5通り、4通りの出方がありますから
5×4×3=60通りあります。
2番目のルール
6点になるのは6÷2=3が2個出たときです。
(3,3,△)、(3,△,3)、(△,3,3)の場合があり、△には3以外の5通りの出方がありますから
5×3=15通りあります。
3番目のルール
6点になるのは6÷3=2が3個出たときで、(2,2,2)の1通り
よって、60+15+1=ウ 76通りとなりますね。

② 出る得点のうち最低が2点、最高が18点ですから、この範囲でAさんとBさんの得点を考えます。
(Bさん2点,Aさん10点)の場合と、(Bさん3点,Aさん15点)の場合が考えられます。
ていねいに調べましょう。
(Bさん2点,Aさん10点)の場合
2点の出方は①より15通り
10点の出方は、(5,5,△)、(5,△,5)、(△,5,5)で15通り
よって、この場合15×15=225通りあります。
(Bさん3点,Aさん15点)の場合
3点の出方は(1,1,1)と(1,2,3)を並べ替えた3×2×1=6通りで、合わせて7通り。
15点の出方は(5,5,5)の1通り
よってこの場合、7×1=7通り
ですから、全部で225+7=エ 232通りとなります。

けっこう手間のかかる問題ですが、大切なことは、まず「調べてみる」こと。
書き出して調べるうちに、ルールが意味することがよりよく理解できるようになります。
そして次が、ていねいな「場合分け」。
①をこの手順できちんと調べ上げることができれば、実は②はそのちょっとした応用であり、手間もさほどかからないということに気づくでしょう。
計算だけで答えが求められない、今回のような地道な数え上げが必要な場合の数の問題は、四天王寺の得意とするところですから、四天王寺志望のみなさんは、こういった形式にしっかりと馴染んでおくことが大切でしょう。(道)

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2016(H28)入試分析 算数 神戸女学院中等部

2016.02.02 16:04|入試問題分析(算数)
さて,今回は神戸女学院の算数の入試問題に目を向けてみましょう。

問題数は大問6問で,小問は13問。
1番(1)(2) 2番(1) 3番(1)(2) 4番(2) 5番(1)(2) は必ずあわせたいところ。
2番(2) 4番(1) 5番(3) 6番 から小問2個取れればという感じでしょうか。

4番の(1)がちょっと面倒なので,ここで動揺してした子がちょっといたかもしれませんね。

では,今回は5番の数列の問題に目を向けてみましょう。
(問題)H28 神戸女学院中学校 大問5番
整数がある規則にしたがって次のように並んでいます。
1,2,4,3,5,7,4,6,8,10,5,7,……
(1) 50番目の数を求めなさい。
(2) 31は全部で何回出てきますか。
(3) ちょうど30回出てくる数のうち,一番小さい数を求めなさい。


どのような規則なのか気づくのにかかる時間に,かなり個人差があると思われます。
たぶん群数列だろうなと予想して,数が減るところの手前に区切り線を入れ,
1,2,4,3,5,7,4,6,8,10,5,7,……
「3,5,7」の前のグループは「2,4」だろうと気づけば,
1,2,4,3,5,7,4,6,8,10,5,7,……
このように区切ることができますね。

(1)1グループ目には1個,2グループ目には2個,3グループ目には3個,…の数が入っています。
1+2+3+4+5+6+7+8+9+5=50
ですから,10グループ目の5番目の数が求める答えです。
10グループ目は10から始まりますので,10,12,14,16,18ですね。

(2)おそらく,群数列の問題は「①区切って②グループ番号をつける」というところまでは,ほとんどの子が普段からしている
作業だと思います。しかし,初めて群数列を習ったころに「③たてにならべる」というのがあったかと思いますが,学年が
進むにしたがってこの3番目の作業をさぼる子が非常に増えてきます。
理由はやらなくても解けるから。実際やらなくても解ける問題がほとんどですし,塾の先生によっては③の指導自体を
省いていることもあります。

しかし,(2)(3)については,この作業をやると格段に気づきやすくなりますよ。実際に見てみましょう。

① 1
② 2,4
③ 3,5,7
④ 4,6,8,10
⑤ 5,7,9,11,13
・      ・
・      ・
・      ・

一番左の列は1以降の数が全て,左から2番目の列は4以降の数が全て,左から3番目の列は7以降の数が全て出ています。
つまり,列の先頭の数が31以下であれば,その列には必ず31が出てくることになります。
また,各列の先頭の数を拾うと,1,4,7,10,13,・・・と等差数列になっていることがわかります。
□列目の先頭の数は□×3-2で,それが31以下になればよいですから,1列目から11列目までが当てはまります。
つまり11回が答えですね。

(3)左から30列目の先頭の数は当然それよりも左の列でも必ず出てくるので30回登場します。
30×3-2=88が答えですね。
ちなみに,ちょうど30回出てくる他の数は31列目にあってはいけませんので,
31×3-2=91より小さい数,つまり89と90です。

「ややこしくなったときは基本に立ち返る」,この問題に限らず様々な場面で役立つ考え方です。
しっかりと意識しておきましょう。(当然立ち返るための基本ができていないとどうしようもないのですが…(^^;)

(池)
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2016(H28)入試分析 算数 東大寺学園中学校

2016.02.01 14:35|入試問題分析(算数)
今回は東大寺学園を取り上げます。

まずは入試の概要から。
出願者数 884名 (昨年度 845名)
受験者数 834名 (昨年度 791名)
合格者数 347名 (昨年度 325名)
実質競争率 2.4倍 (昨年度 2.4倍)

受験者が多かった分合格者数も増えたので、競争率自体は昨年度とほぼ同じとなりました。

算数は受験者平均が62.4点(昨年度51.9点)でした。
今年度の合格最低点は公表されていませんが、公表された資料から見ると、280点+αと考えられます。
昨年度は254/400点でしたから、算数と理科の易化もあって、合格最低点は25点ほど上がったようです。

さて、昨年度から平均点が10点以上上がった算数ですが、入試資料によると、満点が47人。
実際取り組み易い良問が多かったように思います。

大問1 計算・和差の文章題・平面図形 (小問数4)
大問2 場合の数 (小問数3)
大問3 流水算 (小問数3)
大問4 立体図形と比 (小問数3)
大問5 水問題 (小問数4)

合格最低点の7割を確保するためには小問17題中12題は取っておきたいところです。
そのためには、大問3と大問4の攻略が不可欠ですね。

そこで、今回は大問3を見てみましょう。

(問題)H28 東大寺学園中学校 算数 大問3番
南北に流れるまっすぐな川があります。川の下流のA地点と,上流のB地点との間をモーターボートで往復します。川の流れのないところでのモーターボートの速さは一定です。午前11時にA地点からB地点に向かって出発しましたが,途中で2分間エンジンを止めて川に流されていたため,予定より3分遅れてB地点に到着しました。午前11時からモーターボートがB地点に着くまでの川の流れの速さは分速200mでした。
(1) 流れのないところでのモーターボートの速さは分速何mですか。

 B地点で昼食休憩をした後,ちょうど午後2時にA地点に着くように,B地点を出発しました。このときの川の流れの速さは上りのときと同じでした。B地点を出発してから10分後に川の流れの速さが増しました。この後モーターボートがA地点に着くまで川の流れの速さは変わりませんでした。川の流れの速さが増したときにエンジンを止め,しばらく川に流されていましたが,その後エンジンを動かして予定通り午後2時にA地点に着きました。川の流れの速さが増した後,エンジンを動かしていた時間はエンジンを止めていた時間のちょうど5倍でした。
(2) 川の流れの速さが増した後の,川の流れの速さは分速何mになりましたか。

 エンジンを止めて川に流されていた距離は400mでした。
(3) A地点とB地点との間の距離を求めなさい。


(1) 流され始めた地点をC地点、再びエンジンを動かし始めた地点をD地点とすると、
C→DとD→Cの時間の合計が3分,C→Dが2分なのでD→Cが1分です。
つまり、流れの速さと上りの速さの比は1:2なので,上りの速さは200×2=400m/分
静水時の速さは400+200=600m/分

(2) B地点からA地点まで600+200=800m/分で進むと予定通り、午後2時に到着します。
ですから、川の流れの速さが増した地点(E地点とします)からA地点までを、平均分速800mで進めばよいことが分かります。
再びエンジンを動かし始めた地点をF地点、速くなった流れの速さを☆m/分とすると

E→F ☆m/分で[1]分進む      …㋐
F→A (600+☆)m/分で[5]分進む …㋑
E→Aの平均の速さは800m/分   …㋒

ここで、㋐㋑㋒を使って、この速さの関係を「てんびん」に整理すると
toudaiji 2016 1
となります。
①+⑤=⑥が600m/分なので⑤=500m/分
したがって、速くなった流れの速さ☆=800-500=300m/分となります。

(3) E~FとF~Aの距離の比は、300×[1]:900×[5]=1:15なので、E~Aは
400×(1+15)/1=6400m
B~Eの距離は800×10=8000m
よって、6400+8000=14400mです。

昨年、一昨年と難度の高い問題が出題されていて、受験者平均も低かったのですが、今年は大きく様変わりした印象です。
ただ、満点が想定より多かったとしたら、来年度の算数のレベルは再び上がる可能性もあります(今までの東大寺がそうでしたから)。
易しい問題でも気を抜かず1問1問大切に解き切るという姿勢とともに、ある程度の難問対応のトレーニングも欠かせないということでしょう。(道)

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