外郎売
2012.11.08 16:24|雑談|
誰ですか,「がいろうばい」とか読んでいるのは?
「外郎売」と書いて「ういろううり」と読みます。
芝居の経験がある方は,発声(滑舌)の練習の一環として暗唱したことがある人も多いでしょう。
あるいは齋藤孝さんの「声に出して読みたい日本語(確か2冊目の方?)」で知った人もいるかも知れません。
元々は歌舞伎の十八番だったのだそうですね。
いや,なんで思い出したかと言いますと,
先日ここに書いた「東海道五十三次ラン」を今実行していっているのですが,
今日は藤沢から平塚までの距離,13.7kmを走りまして,
その際にふと「外郎売」の中の「藤沢・平塚・大磯がしや」の部分を思い出した次第で。
また覚え直してみようかな。何の意味も無く。
皆さんもよろしければ,以下に転記いたしますので,覚えてみてはいかがでしょうか?
「寿限無」よりはだいぶ覚え甲斐がありますよ~(^o^)
ランニングの方は次は,平塚から大磯の2.9kmと大磯から小田原の15.7kmを合わせて18.6kmを走る予定。
な,な,長い…。
もちろん,「川崎・神奈川・程が谷・戸塚」はすでに通過済みです(^-^)v
現在,62.8km。
京までの距離の約8分の1。
道のりは遠い…。
「外郎売」
拙者(せっしゃ)親方と申すは,御立会(おたちあい)の中(うち)に御存知の御方も御座りましょうが,
御江戸を発(た)ってニ十里上方(かみがた),
相州小田原一色町(いっしきまち)を御過ぎなされて
青物町(あおものちょう)を上(のぼ)りへ御出(おい)でなさるれば,
欄干橋虎屋藤右衛門(らんかんばしとらやとうえもん),
只今は剃髪(ていはつ)致して圓斎(えんさい)と名乗りまする。
元朝(がんちょう)より大晦日(おおつごもり)まで御手に入れまする此(こ)の薬は,
昔,陳(ちん)の国の唐人(とうじん)外郎(ういろう)と云う人,わが朝(ちょう)へ来たり。
帝(みかど)へ参内(さんだい)の折から此の薬を深く籠(こ)め置き,
用ゆる時は一粒(いちりゅう)ずつ冠の隙間より取り出(い)だす。
依ってその名を帝より「とうちんこう」とたまわる。
即ち文字(もんじ)には「頂き,透(す)く,香(にお)い」と書いて「透頂香(とうちんこう)」と申す。
只今は此の薬,殊の外(ことのほか)世上(せじょう)に広まり,
方々(ほうぼう)に偽(にせ)看板を出(いだ)し
イヤ小田原の,灰俵(はいだわら)の,さん俵の,炭俵(すみだわら)の,と色々に申せども,
平仮名をもって「ういろう」と記(しる)せしは親方圓斎ばかり。
もしや御立会の中に,熱海か搭ノ沢(とうのさわ)へ湯治(とうじ)に御出(おいで)でなさるるか,
又は伊勢御参宮(ごさんぐう)の折りからは,必ず御門違いなされまするな。
御上りならば右の方(かた),御下りなれば左側,
八方(はっぽう)が八つ棟(やつむね),面が三つ棟(みつむね),玉堂(ぎょくどう)造り,
破風(はふ)には,菊に桐の薹(とう)の御紋を御赦免(ごしゃめん)あって系図正しき薬で御座る。
イヤ最前より家名(かめい)の自慢ばかり申しても,
御存知無い方には,正真(しょうしん)の胡椒(こしょう)の丸呑み,白河夜船(しらかわよふね),
さらば一粒食べ掛けて,その気味合いを御目に掛けましょう。
先ず此の薬を斯様(かよう)に一粒舌の上に乗せまして,腹内(ふくない)へ納めますると,
イヤどうも言えぬわ,胃,心,肺,肝が健やかになりて,
薫風(くんぷう)喉(のんど)より来たり,口中(こうちゅう)微涼(びりょう)を生ずるが如し(ごとし)。
魚(ぎょ),鳥(ちょう),茸(きのこ),麺類の食い合わせ,その他(ほか)万病即効ある事,神の如し。
さて此の薬,第一の奇妙には,舌の廻ることが銭独楽(ぜにごま)が裸足で逃げる。
ヒョッと舌が廻り出すと,矢も盾も堪らぬじゃ。
そりゃそりゃそらそりゃ,廻って来たわ,廻って来るわ。
アワヤ候(のんど),サタラナ舌(ぜつ)に,カ牙(げ),サ歯音(しおん),ハマの二つは唇の軽重(けいちょう)。
開合(かいごう)爽やかに,
アカサタナハマヤラワ,オコソトノホモヨロヲ。
一つへぎへぎに,へぎ干し,はじかみ,
盆豆(ぼんまめ),盆米(ぼんごめ),盆牛蒡(ごぼう),
摘(つみ)蓼(たで),摘豆,摘山椒(ざんしょ),
書写山(しょしゃざん)の社僧正(しゃそうじょう)。
小米(こごめ)の生噛み,小米の生噛み,こん小米のこ生噛み,
繻子(しゅす),緋繻子(ひじゅす),繻子,繻珍(しゅちん)
親も嘉兵衛(かへい),子も嘉兵衛,親嘉兵衛子嘉兵衛,子嘉兵衛親嘉兵衛。
古栗の木の古切口(ふるきりくち),
雨合羽(あまがっぱ)か番合羽(ばんがっぱ)か,
貴様の脚絆も皮脚絆(かわきゃはん),我等が脚絆も皮脚絆,
尻皮袴(しっかわばかま)のしっ綻び(ぽころび)を,三針針長にちょと縫うて,縫うてちょとぶん出せ,
河原撫子(かわらなでしこ),野石竹(のせきちく),
野良(のら)如来(にょらい),野良如来,三(み)野良如来に,六(む)野良如来。
一寸(ちょっと)先の御小仏(おこぼとけ)に,御蹴躓(おけつまづ)きゃるな,
細溝にどじょにょろり。
京の生鱈(なまだら) 奈良生真名鰹(ならなままながつお),
ちょと四五貫目(しごかんめ)。
御茶立ちょ,茶たちょ,ちゃっと立ちょ,茶立ちょ,青竹茶せんで御茶ちゃと立ちゃ。
来るわ来るわ何が来る,高野の山の御杮(おこけら)小僧。
狸百匹,箸百膳,天目(てんもく)百杯,棒八百本。
武具馬具,武具馬具,三武具馬具,合わせて武具馬具,六(む)武具馬具。
菊栗,菊栗,三菊栗,合わせて菊栗,六菊栗。
麦塵(むぎごみ),麦塵,三麦塵,合わせて麦塵,六麦塵。
あの長押(なげし)の長薙刀(ながなぎなた)は誰(た)が長薙刀ぞ。
向こうの胡麻(ごま)殻は荏(え)の胡麻殻か真(ま)胡麻殻か,あれこそ本の真胡麻殻(まごまがら)。
がらぴいがらぴい風車(かざぐるま)。
起きゃがれ小法師(こぼうし),起きゃがれ小法師,昨夜(ゆんべ)も溢して(こぼして),又溢した。
たぁぷぽぽ,たぁぷぽぽ,ちりからちりから,つったっぽ,たっぽたっぽ一丁蛸(いっちょうだこ)。
落ちたら煮て食お,煮ても焼いても食われぬ物は,
五徳(ごとく),鉄弓(てっきゅう),金熊童子(かなくまどうじ)に,石熊,石持ち,虎熊,虎鱚(とらきす)。
中にも東寺(とうじ)の羅生門には,茨木童子(いばらぎどうじ)が腕栗五合(うでぐりごんごう),掴んでおむしゃる,
彼(か)の頼光(らいこう)の膝元去らず。
鮒(ふな),金柑(きんかん),椎茸(しいたけ),定めて後段(ごだん)な,
蕎麦(そば)切り,素麺(そうめん),饂飩(うどん)か愚鈍(ぐどん)な小新発知(こしんぼち)。
小棚(こだな)の小下(こした)の小桶(こおけ)に小味噌が小有るぞ,
小杓子(こしゃくし)小持って小掬(すく)って小寄こせ。
おっと合点だ,心得田圃(たんぼ)の川崎,神奈川,程ヶ谷,戸塚は走って行けば灸(やいと)を擦(す)り剥(む)く,
三里ばかりか,藤沢・平塚・大磯がしや,
小磯の宿を七つ起きして,早天早々(そうてんそうそう),相州小田原,頂透香。
隠れ御座らぬ貴賎(きせん)群衆(ぐんじゅ)の,花の御江戸の花ういろう。
アレあの花を見て御心を御和らぎゃっと言う,産子(うぶこ),這(は)う子に至るまで,
此の外郎(ういろう)の御評判,御存知ないとは申されまいまいつぶり,角出せ,棒出せ,ぼうぼう眉に,
臼(うす),杵(きね),擂鉢(すりばち)ばちばちぐわらぐわらと,羽目を外(はず)して,
今日(こんにち)御出(おいで)の何茂様(いずれもさま)に,
上げねばならぬ,売らねばならぬと,息勢(いきせい)引っぱり,
東方(とうほう)世界の薬の元締め,薬師如来(やくしにょらい)も照覧(しょうらん)あれと
ホホ敬ってういろうはいらっしゃりませぬか。
(宇)
「外郎売」と書いて「ういろううり」と読みます。
芝居の経験がある方は,発声(滑舌)の練習の一環として暗唱したことがある人も多いでしょう。
あるいは齋藤孝さんの「声に出して読みたい日本語(確か2冊目の方?)」で知った人もいるかも知れません。
元々は歌舞伎の十八番だったのだそうですね。
いや,なんで思い出したかと言いますと,
先日ここに書いた「東海道五十三次ラン」を今実行していっているのですが,
今日は藤沢から平塚までの距離,13.7kmを走りまして,
その際にふと「外郎売」の中の「藤沢・平塚・大磯がしや」の部分を思い出した次第で。
また覚え直してみようかな。何の意味も無く。
皆さんもよろしければ,以下に転記いたしますので,覚えてみてはいかがでしょうか?
「寿限無」よりはだいぶ覚え甲斐がありますよ~(^o^)
ランニングの方は次は,平塚から大磯の2.9kmと大磯から小田原の15.7kmを合わせて18.6kmを走る予定。
な,な,長い…。
もちろん,「川崎・神奈川・程が谷・戸塚」はすでに通過済みです(^-^)v
現在,62.8km。
京までの距離の約8分の1。
道のりは遠い…。
「外郎売」
拙者(せっしゃ)親方と申すは,御立会(おたちあい)の中(うち)に御存知の御方も御座りましょうが,
御江戸を発(た)ってニ十里上方(かみがた),
相州小田原一色町(いっしきまち)を御過ぎなされて
青物町(あおものちょう)を上(のぼ)りへ御出(おい)でなさるれば,
欄干橋虎屋藤右衛門(らんかんばしとらやとうえもん),
只今は剃髪(ていはつ)致して圓斎(えんさい)と名乗りまする。
元朝(がんちょう)より大晦日(おおつごもり)まで御手に入れまする此(こ)の薬は,
昔,陳(ちん)の国の唐人(とうじん)外郎(ういろう)と云う人,わが朝(ちょう)へ来たり。
帝(みかど)へ参内(さんだい)の折から此の薬を深く籠(こ)め置き,
用ゆる時は一粒(いちりゅう)ずつ冠の隙間より取り出(い)だす。
依ってその名を帝より「とうちんこう」とたまわる。
即ち文字(もんじ)には「頂き,透(す)く,香(にお)い」と書いて「透頂香(とうちんこう)」と申す。
只今は此の薬,殊の外(ことのほか)世上(せじょう)に広まり,
方々(ほうぼう)に偽(にせ)看板を出(いだ)し
イヤ小田原の,灰俵(はいだわら)の,さん俵の,炭俵(すみだわら)の,と色々に申せども,
平仮名をもって「ういろう」と記(しる)せしは親方圓斎ばかり。
もしや御立会の中に,熱海か搭ノ沢(とうのさわ)へ湯治(とうじ)に御出(おいで)でなさるるか,
又は伊勢御参宮(ごさんぐう)の折りからは,必ず御門違いなされまするな。
御上りならば右の方(かた),御下りなれば左側,
八方(はっぽう)が八つ棟(やつむね),面が三つ棟(みつむね),玉堂(ぎょくどう)造り,
破風(はふ)には,菊に桐の薹(とう)の御紋を御赦免(ごしゃめん)あって系図正しき薬で御座る。
イヤ最前より家名(かめい)の自慢ばかり申しても,
御存知無い方には,正真(しょうしん)の胡椒(こしょう)の丸呑み,白河夜船(しらかわよふね),
さらば一粒食べ掛けて,その気味合いを御目に掛けましょう。
先ず此の薬を斯様(かよう)に一粒舌の上に乗せまして,腹内(ふくない)へ納めますると,
イヤどうも言えぬわ,胃,心,肺,肝が健やかになりて,
薫風(くんぷう)喉(のんど)より来たり,口中(こうちゅう)微涼(びりょう)を生ずるが如し(ごとし)。
魚(ぎょ),鳥(ちょう),茸(きのこ),麺類の食い合わせ,その他(ほか)万病即効ある事,神の如し。
さて此の薬,第一の奇妙には,舌の廻ることが銭独楽(ぜにごま)が裸足で逃げる。
ヒョッと舌が廻り出すと,矢も盾も堪らぬじゃ。
そりゃそりゃそらそりゃ,廻って来たわ,廻って来るわ。
アワヤ候(のんど),サタラナ舌(ぜつ)に,カ牙(げ),サ歯音(しおん),ハマの二つは唇の軽重(けいちょう)。
開合(かいごう)爽やかに,
アカサタナハマヤラワ,オコソトノホモヨロヲ。
一つへぎへぎに,へぎ干し,はじかみ,
盆豆(ぼんまめ),盆米(ぼんごめ),盆牛蒡(ごぼう),
摘(つみ)蓼(たで),摘豆,摘山椒(ざんしょ),
書写山(しょしゃざん)の社僧正(しゃそうじょう)。
小米(こごめ)の生噛み,小米の生噛み,こん小米のこ生噛み,
繻子(しゅす),緋繻子(ひじゅす),繻子,繻珍(しゅちん)
親も嘉兵衛(かへい),子も嘉兵衛,親嘉兵衛子嘉兵衛,子嘉兵衛親嘉兵衛。
古栗の木の古切口(ふるきりくち),
雨合羽(あまがっぱ)か番合羽(ばんがっぱ)か,
貴様の脚絆も皮脚絆(かわきゃはん),我等が脚絆も皮脚絆,
尻皮袴(しっかわばかま)のしっ綻び(ぽころび)を,三針針長にちょと縫うて,縫うてちょとぶん出せ,
河原撫子(かわらなでしこ),野石竹(のせきちく),
野良(のら)如来(にょらい),野良如来,三(み)野良如来に,六(む)野良如来。
一寸(ちょっと)先の御小仏(おこぼとけ)に,御蹴躓(おけつまづ)きゃるな,
細溝にどじょにょろり。
京の生鱈(なまだら) 奈良生真名鰹(ならなままながつお),
ちょと四五貫目(しごかんめ)。
御茶立ちょ,茶たちょ,ちゃっと立ちょ,茶立ちょ,青竹茶せんで御茶ちゃと立ちゃ。
来るわ来るわ何が来る,高野の山の御杮(おこけら)小僧。
狸百匹,箸百膳,天目(てんもく)百杯,棒八百本。
武具馬具,武具馬具,三武具馬具,合わせて武具馬具,六(む)武具馬具。
菊栗,菊栗,三菊栗,合わせて菊栗,六菊栗。
麦塵(むぎごみ),麦塵,三麦塵,合わせて麦塵,六麦塵。
あの長押(なげし)の長薙刀(ながなぎなた)は誰(た)が長薙刀ぞ。
向こうの胡麻(ごま)殻は荏(え)の胡麻殻か真(ま)胡麻殻か,あれこそ本の真胡麻殻(まごまがら)。
がらぴいがらぴい風車(かざぐるま)。
起きゃがれ小法師(こぼうし),起きゃがれ小法師,昨夜(ゆんべ)も溢して(こぼして),又溢した。
たぁぷぽぽ,たぁぷぽぽ,ちりからちりから,つったっぽ,たっぽたっぽ一丁蛸(いっちょうだこ)。
落ちたら煮て食お,煮ても焼いても食われぬ物は,
五徳(ごとく),鉄弓(てっきゅう),金熊童子(かなくまどうじ)に,石熊,石持ち,虎熊,虎鱚(とらきす)。
中にも東寺(とうじ)の羅生門には,茨木童子(いばらぎどうじ)が腕栗五合(うでぐりごんごう),掴んでおむしゃる,
彼(か)の頼光(らいこう)の膝元去らず。
鮒(ふな),金柑(きんかん),椎茸(しいたけ),定めて後段(ごだん)な,
蕎麦(そば)切り,素麺(そうめん),饂飩(うどん)か愚鈍(ぐどん)な小新発知(こしんぼち)。
小棚(こだな)の小下(こした)の小桶(こおけ)に小味噌が小有るぞ,
小杓子(こしゃくし)小持って小掬(すく)って小寄こせ。
おっと合点だ,心得田圃(たんぼ)の川崎,神奈川,程ヶ谷,戸塚は走って行けば灸(やいと)を擦(す)り剥(む)く,
三里ばかりか,藤沢・平塚・大磯がしや,
小磯の宿を七つ起きして,早天早々(そうてんそうそう),相州小田原,頂透香。
隠れ御座らぬ貴賎(きせん)群衆(ぐんじゅ)の,花の御江戸の花ういろう。
アレあの花を見て御心を御和らぎゃっと言う,産子(うぶこ),這(は)う子に至るまで,
此の外郎(ういろう)の御評判,御存知ないとは申されまいまいつぶり,角出せ,棒出せ,ぼうぼう眉に,
臼(うす),杵(きね),擂鉢(すりばち)ばちばちぐわらぐわらと,羽目を外(はず)して,
今日(こんにち)御出(おいで)の何茂様(いずれもさま)に,
上げねばならぬ,売らねばならぬと,息勢(いきせい)引っぱり,
東方(とうほう)世界の薬の元締め,薬師如来(やくしにょらい)も照覧(しょうらん)あれと
ホホ敬ってういろうはいらっしゃりませぬか。
(宇)
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