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開成中学校 理科 問題解説★2015年(H27年)

2015.03.17 17:12|入試問題分析(理科)
今日は2015年度開成中学校の理科の入試問題の解説です。
今回は第3問を取り上げてみます。

(問題) 平成27年 開成中学校 理科 第3問

 古代ローマ時代から現在まで使われている棒はかり(さおはかり)について考えます。棒はかりは、棒の片側に皿を垂らし、その近くに付けたつりひもをつまみ上げて支点とし、棒が水平になるまでおもりの位置を動かして、皿にのせたものの重さをはかる道具です。
 長さ40㎝、重さ20gの太さが変わらない棒を用意して、棒の真ん中Aを支点としてつりひもでつるしました。支点Aから左に10㎝はなれた位置Bに重さ10gの皿を下げ、棒の別の位置に重さ30gのおもりを下げました。ただし、おもりは支点Aから棒の右はしまで動かせるものとします。

2015開成中学理科第3問①

問1 皿に何ものせずに、棒が水平になるようにおもりを動かします。棒が水平になるときのおもりの位置は支点Aから右に何㎝はなれた位置ですか。小数第一位まで求めなさい。

問2 この棒はかりは、最大で何gの重さまで皿にのせてはかることができますか。ただし、支点の位置と皿の位置は動かさないものとします。


問1 てこのつりあいの問題ですね。まず、左回り、右回りのモーメントを求めます。支点Aは棒の真ん中なので、問1では棒の重さによるモーメントを考える必要はありません。支点Aの左側にあるのは皿だけなので、皿の重さによるモーメントのみ考えましょう。皿の重さは10g、うでの長さ(この場合はABの長さ)は10㎝なので、左回りのモーメントは10×10です。次に右回りのモーメントですが、支点Aから右向きに□㎝離れたところにおもりをつるすと考えます。
そうすると、おもりの重さが30g、うでの長さが□㎝なので、右回りのモーメントは30×□です。棒が水平になる、つまりてこがつりあうということなので、10×10=30×□が成り立ちます。
これより、□=3.33…となりますが、小数第一位まで求めよと書かれているので答えは3.3㎝です。

問2 最大で何gの重さまではかることができますか、という問題ですが、まずどのような状態になったとき最大の重さを測ることができるのかを考えてみましょう。皿にものをのせると左回りのモーメントが大きくなるので、右回りのモーメントも大きくする必要があります。おもりの重さは30gのままです。右回りのモーメントを大きくしたいのであれば、うでを長くすればよいので、うでが最も長いとき、つまり棒の右端におもりをつるしたときに右回りのモーメントは最大となります。皿とのせるものの重さの合計を□gとおくと、左回りのモーメントは□×10、右回りのモーメントは30×20なので、□×10=30×20より
□=60gとなります。しかしこれは皿の重さも含んでいることに注意してください。皿の重さが10gなので、のせることができるものの重さは最大で60-10=50gです。

 次に、この棒はかりの支点を棒の真ん中Aから左に9㎝の位置Cに移動し、皿をその支点Cから左に5㎝はなれた位置Dに付けかえました。ここでは、おもりは棒の左のはしから右のはしまで動かせるものとします。この棒の重さは、いつでも棒の真ん中A一か所にすべてかかっていると考えることができます。棒を真ん中Aからずらしてつるしたときにも、そのように考えて計算することができます。
2015開成中学理科第3問②

問3 皿に50gのものをのせて、おもりを移動させて棒が水平になるようにつり合わせます。そのときのおもりの位置に「50g」の目盛りをつけます。同じようにして「60g」、「70g」などの目盛りをつけていくと、となり合う目盛りの間隔はどうなりますか。次のア~ウの中から1つ選び、記号で答えなさい。
ア 棒の右のはしに近づくほど、目盛りの間隔は広くなる。
イ 棒の右のはしに近づくほど、目盛りの間隔はせまくなる。
ウ 目盛りの間隔は変わらない。

問4 「0g」の目盛りは支点Cを基準として左右どちらに何㎝はなれた位置ですか。小数第一位まで求めなさい。

問5 この棒はかりは、最大で何gの重さまで皿にのせてはかることができますか。ただし、支点の位置と皿の位置は動かさないものとします。

問6 この棒はかりを最大で500gの重さまではかれるようにするためには、どのような工夫をしたらよいですか。次のア~カの中から2つ選び、記号で答えなさい。

ア 皿を重くする。
イ 皿を軽くする。
ウ つりひもを皿に近い位置に付けかえる。
エ つりひもを皿から遠い位置に付けかえる。
オ おもりを重くする。
カ おもりを軽くする。



 ここからは支点の位置が棒の真ん中からずれているため、棒の重さによるモーメントを忘れないようにしましょう。

問3 目盛りの間隔がどうなるかという問題ですが、おもりの位置を計算によって求めてみて変化の様子を調べてみましょう。まず、皿に50gのものを乗せた場合を考えます。支点Cから右向きに□㎝のところにおもりをつるしたとき棒が水平になったとすると、左回りのモーメントは(50+10)×5=300です。右回りのモーメントは、棒の重さによるものとおもりの重さによるものの合計になりますので、20×9+30×□です。棒が水平になるとき、300=20×9+30×□が成り立つので、□=4㎝と求まります。以下同様にして60g、70gのものを乗せた場合の支点からの距離を求めてみましょう。
60gのものをのせたとき、(60+10)×5=20×9+30×□より、□=17/3
70gのものをのせたとき、(70+10)×5=20×9+30×□より、□=22/3
それでは目盛りの間隔を求めてみましょう。
50gと60gの場合、間隔は17/3-4=5/3
60gと70gの場合、間隔は22/3-17/3=5/3
目盛りの間隔は同じであることが確認できました。答えはですね。

問4 まず、おもりをつるさない状態で、左回り、右回りのモーメントを求めてみます。左回りのモーメントは皿の重さによるものなので、10×5=50です。右回りのモーメントは棒の重さによるものなので、20×9=180です。この時点では、右回りのモーメントの方が大きいので、おもりをつるす位置は支点Cよりも左でないといけないことが分かります。支点Cからおもりをつるしたところまでの長さを□㎝とすると、左回りのモーメントは皿の重さによるものとおもりの重さによるものも合計となるので、10×5+30×□です。右回りのモーメントは変わらず180のままなので、10×5+30×□=180より、□=4.33…
となりますが、小数第一位まで求めなさいという指示があるので答えは左に4.3㎝となります

問5 問2でも考えたように、できるだけ重いものをはかろうとする場合、おもりを右の方へ動かせばよいのでしたね。左回りのモーメントは皿とのせるものの重さの合計を□gとすると、□×5です。また右回りのモーメントは棒の重さによるものと、おもりの重さによるものの合計なので20×9+30×29=1050です。□×5=1050より、□=210gと求まります。しかし、これも問2と同様、皿の重さを含んでいるので、はかることができる重さの最大値は210-10=200gとなります。

問6 できるだけ重いものをはかろうと思うのであれば、支点から皿での距離は短い方が良いですね。モーメントは 
(ものの重さ)×(うでの長さ)で求まります。もし、モーメントが一定の値をとるとき、ものの重さとうでの長さは反比例しますから、はかるものの重さをできるだけ大きくしたいのであれば、うでの長さは短くしないといけませんね。
またおもりを重いものに変えると、右回りのモーメントが大きくなるので重いものもはかれるようになります。また、イもおもりの重さを大きくできる要素ではあるのですが、効果は小さいので問題文中に2つ選びとあるので省いてもよいでしょう。以上のことから、答えはウとカになります。

 開成中学校の理科の問題は誰しもが悩むような難問、奇問で構成されているのではなく、基本となる知識をもとにして思考力を問う良問で構成されています。まずは基本事項をしっかりと覚えて、問題演習をこなし、そのあと過去問演習により思考力を鍛えましょう。(和)
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