麻布中学校 理科 問題解説★2015年(H27年)
2015.03.26 10:42|入試問題分析(理科)|
今日は2015年麻布中学校の理科の入試問題の解説です。
今回は第4問を取り上げてみます。
平成27年 麻布中学校 理科 第4問
みなさんは、太陽光や電球の光をプリズムに通すと、色が分かれて虹色に見えることを知ってると思います(図1)。目に見える光は可視光線と呼ばれ、可視光線に含まれる光は、その色に対応した「波長」という値をもっています。波長は長さの単位であるnm(ナノメートル:n(ナノ)は10億分の1を表します。1nmは0.000000001m)で表され、値が大きいと赤色に近づき、小さいと紫色に近づきます。また、可視光線以外の目に見えない紫外線や赤外線などもそれぞれの波長の値をもっています(図2)。

1880年ごろには、気体の水素のみを封じこめた密閉容器の両はしを外部の電源につなぐと、容器の中の水素が赤紫色の光を発することが知られていました。この赤紫色の光をプリズムに通したところ、虹色は観測されず、何本かの決まった波長の値をもつ光、つまり決まった色の何種類かの光のみが観測されました(図3、図4)。

問1 気体の水素が発生する試薬の組み合わせとして適当なものを次のア~オの中から2つ選び、記号で答えなさい。
ア 塩酸とチョーク
イ 水酸化ナトリウム水溶液とアルミニウム
ウ 塩酸と銅
エ 酢と卵の殻
オ 塩酸と鉄
スイスの女学校で物理の教師をしていたバルマーは、この水素が発する光の波長(表1)に興味をもち、この数値に何らかの規則性を見い出そうとしましたが、なかなかうまくいきませんでした。あるとき、バルマーはこれらの波長の値を365で割り、それぞれもっとも近い分数で表してみようと考えました。

問2 表1の赤色、青色、紫色の光の波長の値を365で割った数値を、それぞれ小数第3位を四捨五入して小数第2位まで求めなさい。
バルマーは、問2で求めた小数の値を、もっとも近い分数に当てはめていきました。すると、その分数は以下の式①の形をしており、しかも、□に当てはまる整数値にはきれいな規則性があることが見い出されました。

(分母、分子の□には同じ整数が入ります。)
ただし、式①は帯分数ではなく、仮分数で表され、分母、分子は約分できる場合でも約分しないままで表されるものとします。

問3 表1の赤色、青色、紫色の光について、式①の□に当てはまる整数をそれぞれ答えなさい。
問4 この実験では、図4の紫の光のすぐ左側に、もう一本のうすい紫色の光が観測されていました。式①の□に当てはまる整数に規則性を見い出し、このうすい紫色の波長の値[nm]を予測しなさい。答えは小数第一位を四捨五入して求めなさい。
バルマーはこのような考えを経て、1885年に水素が発する光の波長の規則性を発表しましたが、なぜそのような規則性になるのかなどは、当時不明のままでした。その後、この規則性の理由や、ほかの種類の物質が発する光の規則性などが、理論的に解明されていきました。さまざまな物質が発する決まった色の光は、いろいろなところで利用されています。たとえば、ネオンが発する光を利用したネオンサインや、ナトリウムが発する光を利用したナトリウムランプなどがあります。
また、同じような現象として、ある成分をふくむ物質の水溶液を炎にかざすことで、その成分に特有の色の光を発することが知られています。この現象は炎色反応とよばれており、花火の色を出すときにも利用されています(表2)。

問5 ガスコンロで調理していたみそ汁がふきこぼれると、コンロの火が黄色に見えることがあります。これはみそ汁にふくまれているどのような成分によるものでしょうか。表2を参考にしてふくまれる成分を1つ答えなさい。
問6 花火は、表2に挙げられた成分などを火薬に混ぜ合わせることで、さまざまな色合いを出すことができます。花火の光を利用して、その花火の色を出している複数の成分を明らかにするためには、どのようにして何を調べればよいでしょうか。説明しなさい。必要ならば図を用いて示してもかまいません。
問1 それぞれどのような反応が起こるのか見ていきましょう。
ア 塩酸とチョークを混ぜると二酸化炭素が発生します。チョークの主成分は炭酸カルシウムであることは覚えておきましょう。
イ 水酸化ナトリウム水溶液とアルミニウムを混ぜると水素が発生します。
ウ 塩酸と銅を混ぜても何も発生しません。
エ 酢と卵の殻からは二酸化炭素が発生します。
オ 塩酸と鉄からは水素が発生します。
答え イとオ
問2 なぜ、波長の値を365で割るのか気になるところですが、計算していきましょう。
赤色の場合 656÷365=1.797… よって答えは1.80。
青色の場合 486÷365=1.331… よって答えは1.33。
紫色の場合 434÷365=1.189… よって答えは1.19。
答え 赤色 1.80 青色 1.33 紫色 1.19
問3 まず、問2で求めた小数を分数になおしてみましょう。
赤色の光の場合、小数は1.80なので分数になおすと、9/5になります。分母に注目すると、5=9-4ですから、□に当てはまる整数は赤色の場合、9になります。同じようにして青色と紫色の光についても考えたいところですが、これらの小数を分数になおしても式①の□に当てはまるような整数は見つけにくいので、等式を作って考えてみましょう。
青色の光の場合、486/365=□/(□ー4)より、□=(486-365)÷4=30.25で分子、分母を割ればよいので、
486÷30.25=16.066…と求まります。
紫色の光の場合、434/365=□/(□ー4)より、□=(434-365)÷4=17.25で分子、分母を割ればよいので、
434÷17.35=25.159…と求まります。
□に入るのは整数なので、赤色は□=9、青色は□=16、紫色は□=25としましょう。
答 赤色の光 □=9、青色の光 □=16、紫色の光 □=25
問4 問3の答えから規則性を見い出してみましょう。9、16、25なのですぐに9=3×3、16=4×4、25=5×5が浮かぶと思います。式①の□に入る整数は、波長の値が小さいほど大きくなります。問題文には図4の紫色の光のすぐ左側に、とあるので、表1の紫色の光よりもさらに短い波長の値をもつ光であることが分かります。以上のことからこの光に対応する□の値は25の次の平方数である36であると推測できます。あとは式①を使ってこの光の波長を求めます。光の波長の値を□とおくと、□÷365=36÷(36-4)より、□=410.625と求まります。最後に小数第一位を四捨五入するのを忘れないようにしましょう。
答 411nm
問5 表2を見て考えます。黄色の光は波長の値が530~610nmなのでこの条件に当てはまっているものを考えるとナトリウムであることがわかります。もちろん、みそ汁にはナトリウムそのものが入っているわけではなく、食塩(塩化ナトリウムという化合物)の形で入っています。
答 ナトリウム
問6 いよいよ最後の問題です。この問題単独で問われると難しいのですが、ここは落ち着いてもう一度問題文を読み返してみましょう。プリズムは太陽光や電球の光をさまざまな色に分けるものでしたね。このことを文章にすれば答えになります。
答 プリズムを用いて花火の光を分けてさまざまな波長の光に分けて、それらの波長の値を調べればよい。
毎年、麻布中学校の理科はあまり見慣れない題材をもとに出題されています。しかし、そのあまり見慣れない事柄を知識としてもっておく必要はありません。麻布中学校の問題には必ず、ヒントとなる文章が書かれていて、それをもとにして考えていけば答えられるようになっています。対策としては5年生終了時点で一通りの基礎は仕上げてしまい、6年生では、思考型の入試問題に取組み、過去問で仕上げに入るのが良いでしょう。(和)
今回は第4問を取り上げてみます。
平成27年 麻布中学校 理科 第4問
みなさんは、太陽光や電球の光をプリズムに通すと、色が分かれて虹色に見えることを知ってると思います(図1)。目に見える光は可視光線と呼ばれ、可視光線に含まれる光は、その色に対応した「波長」という値をもっています。波長は長さの単位であるnm(ナノメートル:n(ナノ)は10億分の1を表します。1nmは0.000000001m)で表され、値が大きいと赤色に近づき、小さいと紫色に近づきます。また、可視光線以外の目に見えない紫外線や赤外線などもそれぞれの波長の値をもっています(図2)。

1880年ごろには、気体の水素のみを封じこめた密閉容器の両はしを外部の電源につなぐと、容器の中の水素が赤紫色の光を発することが知られていました。この赤紫色の光をプリズムに通したところ、虹色は観測されず、何本かの決まった波長の値をもつ光、つまり決まった色の何種類かの光のみが観測されました(図3、図4)。

問1 気体の水素が発生する試薬の組み合わせとして適当なものを次のア~オの中から2つ選び、記号で答えなさい。
ア 塩酸とチョーク
イ 水酸化ナトリウム水溶液とアルミニウム
ウ 塩酸と銅
エ 酢と卵の殻
オ 塩酸と鉄
スイスの女学校で物理の教師をしていたバルマーは、この水素が発する光の波長(表1)に興味をもち、この数値に何らかの規則性を見い出そうとしましたが、なかなかうまくいきませんでした。あるとき、バルマーはこれらの波長の値を365で割り、それぞれもっとも近い分数で表してみようと考えました。

問2 表1の赤色、青色、紫色の光の波長の値を365で割った数値を、それぞれ小数第3位を四捨五入して小数第2位まで求めなさい。
バルマーは、問2で求めた小数の値を、もっとも近い分数に当てはめていきました。すると、その分数は以下の式①の形をしており、しかも、□に当てはまる整数値にはきれいな規則性があることが見い出されました。

(分母、分子の□には同じ整数が入ります。)
ただし、式①は帯分数ではなく、仮分数で表され、分母、分子は約分できる場合でも約分しないままで表されるものとします。

問3 表1の赤色、青色、紫色の光について、式①の□に当てはまる整数をそれぞれ答えなさい。
問4 この実験では、図4の紫の光のすぐ左側に、もう一本のうすい紫色の光が観測されていました。式①の□に当てはまる整数に規則性を見い出し、このうすい紫色の波長の値[nm]を予測しなさい。答えは小数第一位を四捨五入して求めなさい。
バルマーはこのような考えを経て、1885年に水素が発する光の波長の規則性を発表しましたが、なぜそのような規則性になるのかなどは、当時不明のままでした。その後、この規則性の理由や、ほかの種類の物質が発する光の規則性などが、理論的に解明されていきました。さまざまな物質が発する決まった色の光は、いろいろなところで利用されています。たとえば、ネオンが発する光を利用したネオンサインや、ナトリウムが発する光を利用したナトリウムランプなどがあります。
また、同じような現象として、ある成分をふくむ物質の水溶液を炎にかざすことで、その成分に特有の色の光を発することが知られています。この現象は炎色反応とよばれており、花火の色を出すときにも利用されています(表2)。

問5 ガスコンロで調理していたみそ汁がふきこぼれると、コンロの火が黄色に見えることがあります。これはみそ汁にふくまれているどのような成分によるものでしょうか。表2を参考にしてふくまれる成分を1つ答えなさい。
問6 花火は、表2に挙げられた成分などを火薬に混ぜ合わせることで、さまざまな色合いを出すことができます。花火の光を利用して、その花火の色を出している複数の成分を明らかにするためには、どのようにして何を調べればよいでしょうか。説明しなさい。必要ならば図を用いて示してもかまいません。
問1 それぞれどのような反応が起こるのか見ていきましょう。
ア 塩酸とチョークを混ぜると二酸化炭素が発生します。チョークの主成分は炭酸カルシウムであることは覚えておきましょう。
イ 水酸化ナトリウム水溶液とアルミニウムを混ぜると水素が発生します。
ウ 塩酸と銅を混ぜても何も発生しません。
エ 酢と卵の殻からは二酸化炭素が発生します。
オ 塩酸と鉄からは水素が発生します。
答え イとオ
問2 なぜ、波長の値を365で割るのか気になるところですが、計算していきましょう。
赤色の場合 656÷365=1.797… よって答えは1.80。
青色の場合 486÷365=1.331… よって答えは1.33。
紫色の場合 434÷365=1.189… よって答えは1.19。
答え 赤色 1.80 青色 1.33 紫色 1.19
問3 まず、問2で求めた小数を分数になおしてみましょう。
赤色の光の場合、小数は1.80なので分数になおすと、9/5になります。分母に注目すると、5=9-4ですから、□に当てはまる整数は赤色の場合、9になります。同じようにして青色と紫色の光についても考えたいところですが、これらの小数を分数になおしても式①の□に当てはまるような整数は見つけにくいので、等式を作って考えてみましょう。
青色の光の場合、486/365=□/(□ー4)より、□=(486-365)÷4=30.25で分子、分母を割ればよいので、
486÷30.25=16.066…と求まります。
紫色の光の場合、434/365=□/(□ー4)より、□=(434-365)÷4=17.25で分子、分母を割ればよいので、
434÷17.35=25.159…と求まります。
□に入るのは整数なので、赤色は□=9、青色は□=16、紫色は□=25としましょう。
答 赤色の光 □=9、青色の光 □=16、紫色の光 □=25
問4 問3の答えから規則性を見い出してみましょう。9、16、25なのですぐに9=3×3、16=4×4、25=5×5が浮かぶと思います。式①の□に入る整数は、波長の値が小さいほど大きくなります。問題文には図4の紫色の光のすぐ左側に、とあるので、表1の紫色の光よりもさらに短い波長の値をもつ光であることが分かります。以上のことからこの光に対応する□の値は25の次の平方数である36であると推測できます。あとは式①を使ってこの光の波長を求めます。光の波長の値を□とおくと、□÷365=36÷(36-4)より、□=410.625と求まります。最後に小数第一位を四捨五入するのを忘れないようにしましょう。
答 411nm
問5 表2を見て考えます。黄色の光は波長の値が530~610nmなのでこの条件に当てはまっているものを考えるとナトリウムであることがわかります。もちろん、みそ汁にはナトリウムそのものが入っているわけではなく、食塩(塩化ナトリウムという化合物)の形で入っています。
答 ナトリウム
問6 いよいよ最後の問題です。この問題単独で問われると難しいのですが、ここは落ち着いてもう一度問題文を読み返してみましょう。プリズムは太陽光や電球の光をさまざまな色に分けるものでしたね。このことを文章にすれば答えになります。
答 プリズムを用いて花火の光を分けてさまざまな波長の光に分けて、それらの波長の値を調べればよい。
毎年、麻布中学校の理科はあまり見慣れない題材をもとに出題されています。しかし、そのあまり見慣れない事柄を知識としてもっておく必要はありません。麻布中学校の問題には必ず、ヒントとなる文章が書かれていて、それをもとにして考えていけば答えられるようになっています。対策としては5年生終了時点で一通りの基礎は仕上げてしまい、6年生では、思考型の入試問題に取組み、過去問で仕上げに入るのが良いでしょう。(和)
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